初出:valuepress(2026年6月4日) https://www.value-press.com/pressrelease/375467
小林製薬紅麹事件研究解説【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 健康被害の「原因」について私の認識の訂正と、原因不明である理由の構造的説明
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年6月4日、自社ウェブサイトに小林製薬紅麹事件 【シリーズ】健康被害の「原因」について——私の認識の訂正と、原因不明である理由の構造的説明——モナコリンK説から三重の安全性空白へ——を公開した。
株式会社薫製倶楽部 代表取締役・薬剤師 森 雅昭
株式会社薫製倶楽部(岡山県都窪郡早島町)は2026年6月4日、自社ウェブサイトに小林製薬紅麹事件 【シリーズ】健康被害の「原因」について——私の認識の訂正と、原因不明である理由の構造的説明——モナコリンK説から三重の安全性空白へ——
を公開した。
▼対象記事URL
https://kunsei.com/archives/957
| 【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 第9弾 |
| 健康被害の「原因」について——私の認識の訂正と、原因不明である理由の構造的説明——モナコリンK説から三重の安全性空白へ—— |
プレスリリース 我々紅麹業界に何が起こったか 78
株式会社薫製倶楽部 代表取締役・薬剤師 森 雅昭
| 前号(PR73)では、紅麹コレステヘルプとペニシリンの製法比較を通じ、「精製なし+食経験なし+UV変異による未知代謝物」という三重の安全性空白を論じた。
今号では、私自身の認識の変遷と訂正を公表する。
私は薬剤師であり、同時に食品会社の代表取締役でもある。本件発生当初、私は「健康被害の原因はモナコリンKである可能性が高い」と判断し、対外的にもその旨を発言してきた。しかし、その判断は誤りであった。
ここに訂正するとともに、なぜそのような誤りが生じたか、そして「今も原因は誰にもわからない」という命題の構造的根拠を述べる。 |
■ ① 「モナコリンK説」——私がそう判断した理由
| 紅麹コレステヘルプによる健康被害が報道された当初、私はその原因についてモナコリンKが有力だと考えていた。理由は以下のとおりである。
・症状(腎障害・筋肉障害等)はスタチン系薬物の副作用プロファイルと部分的に一致していた
・公開されている被害者の症例情報は、スタチン誘発性腎症・横紋筋融解症と矛盾しなかった
・薬剤師として、発酵産物の主成分=主生成物という思考回路が染み付いていた
薬剤師の職能は、主成分(有効成分)を中心に考える。不純物・副生成物は「管理すべき対象」として念頭にはあるが、実務の焦点は常に「主成分の作用・副作用・相互作用」にある。これが私の認識を歪めていた。 |
■ ② 認識が変わった根拠——特許情報が示した四つの事実
| 認識が変わったのは、小林製薬の特許情報を精査した後である。
そこで確認した事実は以下の四点である。
|
| 確認事項 | 内容 |
| ① 使用菌株 | BP-412:UV変異処理工業株。2007年寄託。自然界の伝統的紅麹菌株とは代謝物プロファイルが根本的に異なる(PR71参照) |
| ② 精製工程 | ペニシリン製造と異なり、精製・単離工程なし。発酵物全体(菌体・培地成分・全代謝物)をそのまま製品化(PR73参照) |
| ③ 培養期間 | 47日間という長期発酵。通常の食品発酵と比較して著しく長い。長期培養により代謝物の種類・蓄積量が変動する可能性がある |
| ④ 投与形態 | 錠剤による経口投与。食品として摂取する場合と異なり、特定成分が高濃度・定量的に継続摂取される |
| これらの事実を重ね合わせると、「主成分であるモナコリンK」という単一の視点では到底説明しきれない複合的な暴露状況が浮かび上がる。
私の認識はここで根本的に転換した。 |
■ ③ 反省——「主成分しか見ていなかった」という過ち
| 薬剤師は主成分を中心に考える。
食品会社の経営者は発酵物全体を見る。
私はその両方の立場にいながら、本件において薬剤師的思考——主成分しか見ない思考——に引きずられていた。
食品会社として14年間、発酵物全体の複雑さと向き合ってきた経験を持ちながら、事案の性格上「薬」との接点(モナコリンK=スタチン類似物質)に目が向き、副生成物群を過小評価した。これは率直に反省しなければならない。 |
■ ④ 「原因は誰にもわからない」——これが構造的命題である理由
| 健康被害の直接原因は、現時点で誰にもわからない。これは「調査が不十分」という一時的な問題ではなく、構造的な問題である。
その構造を以下に整理する。 |
| 問題の構造 | 原因不明を生む理由 |
| ① 食経験の不在 | BP-412のUV変異代謝物に対する「食経験(history of safe use)」は存在しない。過去の蓄積データがないため、何が「正常範囲」かを判断する基準自体がない |
| ② 精製なき暴露 | 消費者が摂取したのは「モナコリンK」ではなく「BP-412発酵物全体」である。その中に含まれる全代謝物の同定・定量は行われていない |
| ③ 長期培養の影響 | 47日間の長期発酵で生じる代謝物は、通常の短期発酵とは質的・量的に異なる可能性がある。しかしその評価は行われていない |
| ④ 錠剤投与の増幅効果 | 食品として自然に摂取する場合と異なり、錠剤による定量的・継続的投与は特定成分の体内蓄積を促進する。これが何をもたらすか、食経験のない代謝物については予測不能である |
| ⑤ 医薬知識の限界 | 医薬の知識もまた、過去の経験の積み上げにすぎない。前例のない代謝物組成の前には、既存の毒性学・薬理学の知見は参照点を失う |
| 一般的な毒性メカニズムの観点から申し上げるとすれば、肝臓・腎臓等の代謝・排泄臓器に何らかの負担が生じる可能性はあり得る。しかしそれ以上の特定は、現在の科学的知見では不可能である。
「原因がわからない」は、調査の失敗ではなく、食経験なき代謝物を精製せずに錠剤で高濃度・長期投与したという設計そのものの帰結である。 |
■ ⑤ それでも小林製薬は補償すべきである
| 原因の特定が困難であるという事実は、小林製薬の責任を軽減しない。むしろ逆である。
小林製薬は以下のすべてを知り得た、あるいは知るべきであった立場にある。
・UV変異処理工業株(BP-412)を使用していること
・精製工程を経ずに発酵物全体を製品化していること
・その代謝物プロファイルに対する食経験が存在しないこと
・47日という長期培養を行っていること
・錠剤という投与形態で継続的に消費者が摂取することを前提としていること
これらの事実を前提としながら、安全性の空白を埋めないまま機能性表示食品として市販したことの責任は重い。
私は、小林製薬が被害を訴えるすべての患者に対して補償すべきであると考える。原因の特定ができないことは、補償の免除理由にならない。食経験のない代謝物に患者を暴露させたという設計上の事実が、補償義務の根拠となる。 |
| 【本号のまとめ】
・私はかつて「健康被害の原因はモナコリンKの可能性が高い」と発言してきた。ここに訂正する
・誤りの原因は、薬剤師として主成分のみに着目し、副生成物群を過小評価したことにある
・訂正の根拠:BP-412はUV変異工業株であり、精製なし・47日長期培養・錠剤投与という複合的暴露構造が存在する
・食文化において安全性を担保してきたのは食経験である。食経験のない代謝物を精製せずに錠剤で長期投与した場合、原因特定は構造的に不可能に近い
・「何が原因かわからない」という結論は、この設計の必然的帰結である
・小林製薬は、被害を訴えるすべての患者に対して補償すべきである
→ 続く(PR79):以降の予定 行政の対応と「収去なき断定」問題の深化 |
| 株式会社薫製倶楽部
代表取締役・薬剤師 森 雅昭
〒701-0303 岡山県都窪郡早島町前潟611-1
TEL:090-2001-0686 Email:sales@kunsei.co.jp |
| 【シリーズ】小林製薬・行政・マスコミによって隠されていること 第9弾 |
| 健康被害の「原因」について——私の認識の訂正と、原因不明である理由の構造的説明 ——モナコリンK説から三重の安全性空白へ—— |